ハンバーグの歴史
vol.08
チルドハンバーグの歴史年表
全国のスーパーに150種類近くが流通していると言われているチルドハンバーグの世界。
日本のチルドハンバーグの歩みを年表にまとめました。(ハンバーグ界の主要トピックスも盛り込んであります)
今まで以上に興味を持っていただけるとうれしいです(強火)。
NHK(日本ハンバーグ協会)
理事長バーグマン田形 調べ
■黎明期
1955~64年(昭和30年代)
- 冷蔵技術の発展から精肉店で挽肉が売り出される。
ハンバーグを始め、挽肉を使った料理の間口が広がる。
1957年(昭和32年)
- NHK『きょうの料理』放送開始。
1960年(昭和35年)から出演の村上信夫シェフがハンバーグのレシピを広める。
1959年(昭和34年)
- テレビアニメ『ポパイ』放送開始。
いつもハンバーガーを食べているキャラクター「ウィンピー」により、ハンバーグ&ハンバーガーの注目が高まる。
1962年(昭和37年)
- スーパーマーケットが全国に拡大。
- マルシンフーズより「マルシンハンバーグ」販売開始。
チルドハンバーグ商品の先駆け的存在。当時はハンバーグの一般的認知がまだまだ低い状態。
1963年(昭和38年)
- 「洋食店ならどこにでもあるハンバーグ」「売り上げ上位」「ひと工夫を」(「日刊食堂」より )。外食産業ではハンバーグがポピュラーな存在に(都会限定と思われる)。
1965年(昭和40年)
- 冷蔵庫の普及率が50%を超える。家庭でのハンバーグ作りが拡大。
1968年(昭和43年)
- 子供の人気メニューが玉子焼きからハンバーグへ(複数の書籍に記述あり)。アニメ『ハクション大魔王』の好物がコロッケから急遽ハンバーグに変更した理由?
- 大豆たんぱく製人造肉の試食会開催(衆議院物価対策特別委員会にて)
「本物と味や舌触りは変わらない」
技術の発展とともに「大豆(ソイ)ミート」として人気に。現在、丸大「お肉のような大豆ハンバーグ」などが販売中。
1969年(昭和44年)
- テレビアニメ『ハクション大魔王』放送開始。主人公の好物がハンバーグ、番組スポンサーにマルシンフーズとあってハンバーグ人気が拡大
■成長期
1970年(昭和45年)
- 石井食品「チキンハンバーグ」販売開始。※業界初の調理済みハンバーグ
当初はビーフ&チキン、ビーフもラインナップ。1997年(平成9年)より食品添加物不使用に。
- ハインツ「業務用デミグラスソース」販売開始 ※日本初のデミグラス缶
これまでのハンバーグソースはケチャップや中濃ソースがポピュラーだった。 - ファミレス文化の始まり。続々登場するファミレスにより、ハンバーグがより親しみやすいご馳走になっていく。
- 女性の社会進出(女性雇用者1,000万人突破)。家庭でのチルド・冷凍ハンバーグが重宝される。
- 学校給食費が倍に(小学校低学年1ヶ月570円→1,000円、高学年650円→1,100円)。肉料理の割合が増え、子供たちがハンバーグに親しむきっかけとなる。
当初の給食ハンバーグは衛生面から油で揚げたハンバーグも多かった。1969年放送開始の『ハクション大魔王』の油で揚げる描写に繋がるかも?
1971年(昭和46年)
- 冷凍冷蔵庫が普及し始める。冷凍食品の生産量18万トン超、前年比約30%アップと躍進。
1973年(昭和48年)
- 「ハンバーグとハンバーガーが定着」
「冷凍食品を中心に、チルド、レトルト、缶詰と商品化」(缶詰時報より)
1968年に比べて4.28倍に。
■第1次黄金期
1975年(昭和50年)
- 「レトルトハンバーグが出揃う」(缶詰時報より)。1個90gで100円前後が相場、実売価格は70~80円ほど。
1976年(昭和51年)
- ハウス食品「ハンバーグヘルパー」販売開始 ※当初は「バーガーヘルパー」
家庭のハンバーグのクオリティがアップ。
- 「マルシンハンバーグ」日産100万個突破。1975年放送開始のテレビアニメ『タイムボカンシリーズ』のCM効果も大きいと思われる。
1978年(昭和53年)
- 丸大「チキンハンバーグ」販売開始。
当初はビーフ、ポークもラインナップ。耳に残るCMシリーズで認知を急速に拡大。
1980年(昭和55年)
- 「週刊現代」で「家庭料理No.1人気になった『ハンバーグ』のギネス的研究」特集。
「ママの得意料理」「男性が選ぶうちの味ベスト10」など数々のアンケートで1位を獲得。
「年率50%の成長商品(ファミレス)」「この3,4年40%ずつの売り上げ伸び率(冷凍食品)」
「ハンバーグ・ハンバーガーの需要が急激に拡大したのは昭和48年頃から、国民食になりつつある」(日本ハンバーグ・ハンバーガー協会専務理事)。
ハンバーグが国民食に。
NHK『きょうの料理』で、帝国ホテル総料理長・村上信夫シェフの「ハンバーグステーキ」レシピが広まる(出演は1962年から)
■成熟期
1986年(昭和61年)
- チルドハンバーグ売り上げ1位マルシンフーズ 2位石井食品 3位丸大食品
「昭和55年ごろまでは10%前後の成長を続けてきたが、過去5年間は1~6%の低成長」
「中心だったチキンハンバーグの比重が低下し、牛肉を多く使った上級品の比重が高まる」
「(最近目立ってきたのが)低カロリー、低脂肪をセールスポイントにした健康志向型商品」
「今後各社が力を入れるのが、大人向け、若者向けなどに狙いをしぼった夕食メニュー用ハンバーグ」
(日経産業新聞2月7日記事より)
子供の人気メニューが玉子焼きからハンバーグへ(農林水産省公式サイト「日本食の歴史」より)
1987年(昭和62年)
- チルドハンバーグ売り上げ1位マルシンフーズ 2位石井食品 3位丸大食品
前年と同じランキングからも、3社の看板ハンバーグの人気・認知度の高さが伺える。
「チルドハンバーグ成熟期」(缶詰時報より)
■安定期
1992年(平成4年)
- すかいらーくが「ガスト」に転換。外食ハンバーグでは低価格化とカジュアル化がブームに。
2000年(平成12年)
- チルドハンバーグメーカー別売り上げランキング (日経流通新聞10月7日の記事より)
1位 日本ハム「炭火焼ハンバーグ」(デミ・和風おろし)など
2位 石井食品「イシイ チキンハンバーグ」など
3位 伊藤ハム「備長炭焼和牛入りハンバーグ」(9月新発売)など
4位 マルシンフーズ「マルシンハンバーグ」など
「チルドハンバーグはシェア変動が少ない」
石井の「チキンハンバーグ」「マルシンハンバーグ」が根強い人気。
2001年(平成13年)
- 「チルドハンバーグの市場規模は、90年代より安定推移し、2000年の市場規模は推定59,400トン、432億円と見られます」(伊藤ハム2001年10月18日付けリリースより)
■日本ハム牽引期
2005年(平成17年)
- チルドハンバーグ商品別売り上げランキング (日経MJ2月21日の記事より)
1位 ミルポアデミグラスハンバーグ 日本ハム
2位 炭火焼ハンバーグ・デミグラスソース 日本ハム
3位 備長炭焼仕上げハンバーグ・デミグラスソース付 伊藤ハム
4位 プレミアムハンバーグ豊潤デミグラスソース(新発売) 日本ハム
5位 マルシンハンバーグ3個束 マルシンフーズ
「日ハムが1,2位独占」
「ミルポアデミグラスハンバーグ」、「プレミアムハンバーグ豊潤デミグラスソース(現・豊潤デミグラスハンバーグ)」ともにリニューアルして現在も販売中。日本ハム商品が豊富なバリエーションで市場を席巻。
2009年(平成21年)
- チルドハンバーグ商品別売り上げランキング (日経MJ9月7日の記事より)
1位 マルシンハンバーグ マルシンフーズ
2位 丸大チキンハンバーグ3個束 丸大食品
3位 マルシンハンバーグ3個束 マルシンフーズ
4位 ミルポア デミグラスハンバーグ3個入り 日本ハム
5位 直火焼でおいしいハンバーグ3個入り 日本ハム(7月1日発売)
すべて現在も販売中。昭和のレジェンド組が日本ハムを追い抜く大健闘。
2010年(平成22年)
- セブンイレブン「金のハンバーグ」販売開始。
当初は「金のハンバーグステーキ」258円、初年度から200万食超えの大ヒットに。このヒットを受け、コンビニ各社のチルドハンバーグが活性化。8度のリニューアルを経て、現在は「金の直火焼ハンバーグ」として販売中。製造元は日本ハム。
2012年(平成24年)
- 日本ハム「濃厚とろける4種チーズのハンバーグ」販売開始。※3個入り
何度かのリニューアルを繰り返して現在も売り上げ1位を安定してキープ中。
- チルドハンバーグ商品別売り上げランキング (日経MJ9月7日の記事より)
1位 とろける4種チーズのハンバーグ 3個入り 日本ハム「このジャンルでは久しぶりの大ヒットといえる商品」
2位 プレミアムハンバーグ豊潤デミグラスソース 日本ハム
3位 丸大チキンハンバーグ3個束 丸大食品
4位 マルシンハンバーグ マルシンフーズ
5位 ミルポア デミグラスハンバーグ3個入り 日本ハム
6位 マルシンハンバーグ3個束 マルシンフーズ
10位 イシイ チキンハンバーグ 石井食品
「日本ハムの推計では11年度のハンバーグ市場は310億円。前年比に比べて1割ほど伸びた。積極出店を続けるコンビニエンスストアが単身世帯や遠出しずらい高齢者など、スーパーとは異なる客層をつかんでおり、売り場が広がっていることも大きい」
日本ハムが打ち出した高級路線と、リーズナブルな昭和レジェンド組が共存。
■第2次黄金期
2015年(平成27年)
- 伊藤ハム「旨包(うまづつみ)ボリュームリッチハンバーグ」販売開始。
日経MJ 2016年1月29日の記事でヒットの理由を紹介。売り上げランキングの上位をキープしていく。
2016年(平成28年)
- 伊藤ハム「旨包(うまづつみ)ボリュームリッチハンバーグ」のヒットを受け、ボリューム&クオリティにこだわった「高付加価値ハンバーグ」が各社から登場。
ハンバーグ専門店・ファミレスのハンバーグは平均160g以上が主流であるのに対し、既存のチルドハンバーグは120g以下が大半だった中、品質にこだわった上で160g以上のボリュームアップ商品が人気となる。
2月に日本ハム「極み焼 ハンバーグステーキ」販売開始。
- ハム・ソーセージが前年比割れの中(フルグラ等の朝食市場参入も影響大)、チルドハンバーグは好調に推移。
50、60代主婦が主な購買層(子供の頃のご馳走世代)「夕食は簡単に、でも満足度は高く」。
※ハンバーグ好きな60代男性は98年16.1% → 2014年38.7%(博報堂生活総研調べ)
- 「チルドハンバーグは、東日本大震災後に内食需要が急増したことで大きく拡大した。2011年以降は、より簡便性に高い電子レンジ調理タイプや夕食需要の取り込みを図った商品のラインナップが投入されたことにより、市場は拡大を続けている」(富士経済2017年12月14日発表のデータより)
- 「(2016年度)市場価値の大きいハンバーグは、夕食のおかず需要に対応した高付加価値商品が消費者の食卓ニーズをとらえたほか、主要企業による積極的な新商品の投入が奏功した」(流通ニュース2018年2月16日付け記事より)
現在のチルドハンバーグの世界は…?
現在(2018年11月時点)のチルドハンバーグの世界は、「濃厚とろける4種チーズのハンバーグ 3個入り(日本ハム)」が絶対的な不動の王者!
それを追うのが、高付加価値ハンバーグの「旨包ボリュームリッチハンバーグ(伊藤ハム)」シリーズと極み焼ハンバーグステーキ(日本ハム)」シリーズといった様相です。
その争いを横目に、「丸大チキンハンバーグ 3個束(丸大食品)」「マルシンハンバーグ(マルシンフーズ)」が昔ながらの低価格路線で安定して根強い人気。実際、この2種類はスーパーに置かれている率が非常に高い!
昭和の時代にバンバン流れていたCM効果もあって、そのブランド認知は絶大なものがあります。
伊藤ハムvs日本ハムの高付加価値ハンバーグ対決がそれぞれ新作を出し尽くした今、次に来るのは「3個入りタイプ」ではないかと、理事長バーグマン田形は考えています。
王者の「濃厚とろける4種チーズのハンバーグ 3個入り(日本ハム)」はもちろん、「直火焼きデミグラスハンバーグ 3個入り(プリマハム)」もファンが多い商品です。「てりたまハンバーグ てりやき味 3個入り(日本ハム)」も目にする機会がグッと増えてきました。
これら「3個入りタイプ」は実売価格で298円が相場ですが、その上の価格帯である「旨包ボリュームリッチハンバーグ(伊藤ハム)」シリーズと「極み焼ハンバーグステーキ(日本ハム)」シリーズも、298円の特売で大々的に売り出されるケースが多いです。
つまり、スーパーにおけるチルドハンバーグの売れ筋ボーダーラインは「298円」!
この298円を超えていようが、迷わず「買いたい!」「食べたい!」と思える。そんな意欲的な新商品の登場が楽しみであります。
ちなみに、フレーバーではチーズが好調の模様。今後ヨーロッパからの輸入チーズ関税が引き下がるとされているため、チーズ市場はもっと拡大するはず。この波はチルドハンバーグの世界にも影響するに違いありません。
執筆:バーグマン田形
日本ハンバーグ協会理事長。2,500食以上のハンバーグを食べ続けてきたハンバーグマニア。自身が定義付けした「進化系ハンバーグ」を多数プロデュース。食品メーカーやコンビニとのコラボ実績、メディア出演実績も多数。ハンバーグの歴史、最新情報等、ハンバーグのことなら何でもお任せ!
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